日本酒読本
第19回
沈黙の肝臓 「膵臓〜すいぞう」 のためにも、適量飲酒と良質蛋白質が肝心です。
本間 達ニ (ほんま たつじ)さん

1932年、群馬県生まれ。
信州大学医学部教授。
消化器、循環器専攻、膵臓研究の権威。

 膵臓(すいぞう)とアルコールの関係を調べてみましょう。
 食物を消化する消化酵素の大部分を、また血糖値を左右するインスリン、グルカゴンなどのホルモンを分泌する膵臓(すいぞう)は、とても大切な臓器のわりにはその存在が明らかになったのは意外と新しく、いわゆる五臓六腑には含まれていないのです。

 症状がわかりにくく沈黙の臓器ともいわれる膵臓も、長期にわたって多量の飲酒を続けると、膵炎(アルコール性膵炎)になることが知られています。けれども、お酒を飲むとどうして膵臓がやられてしまうのかはわかっていません。ただ、アルコールに弱い体質の人がかかることだけははっきりしています。留意したいのは、アルコールに弱い体質の人は、45〜50歳までには膵炎が完成してしまうということ。50歳過ぎても出ない人は、そういう体質でないといえます。

飲酒は自律神経を安定させる効果があります。
 一方、膵臓は自律神経に非常に敏感で、精神状態が落ち着いている時のほうが膵液が流れやすい。この流れを制御しているのはODDIという括約筋で、ここが膵液や胆汁の出口にあたり、この筋肉が収縮すると流れが滞ってしまい、自家消化を起こす急性膵炎になったり、圧力の高い膵液が胆管の方に逆流して胆石の一原因になったりと、弊害が出てきます。これに対して、飲酒は、精神を落ち着け自律神経を安定させる働きがあり、ODDI括約筋を弛緩させます。膵臓とアルコールの絶妙のバランス関係といえるでしょう。

 蛋白質を摂取し、ゆっくりと楽しみましょう
 膵臓はアルコール代謝酵素を合成する機能を持たないので、血液。で運ばれてくるアルコールに対してはまったくの無防備。だから血中アルコール濃度が急に上がるような飲み方を避けることと、アルコール濃度の低い日本酒などの醸造酒を程々に飲むことが、お酒を楽しむコツでしょう。また、膵臓は蛋白質を集めて消化酵素を合成する大切な臓器ですから、良質の蛋白質をバランスよく摂取することが重要です。

 適量のお酒を、食事をしながら家族や友人たちとゆっくり楽しむことが、膵臓にとっても、ましてやアルコールに弱い体質の人にとってもおいしい飲み方のようです。
もっとお酒が楽しくなる「日本酒読本」より
[発行:日本酒造組合中央会]

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